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伊東 謙介

私はこれまで「美術品の価値を決める制度設計に挑戦する行為自体を同時代性のある芸術にしたい」という思いで、アーティストとしての作品制作と研究者としての論文執筆の両面から活動を続けてきました (https://knskito.com/cv/)。

この思いは、以下の段階的な経験が結びつくことによって形成されました:
・中学生のころに村上隆氏の『芸術起業論』を読み、現代美術を日本に産業として根付かせることを人生のテーマとして意識するようになった。
・高校生のころにいわゆる「失われた30年」の停滞感のなかで、何でも先送りするこの社会では現代美術の産業化など不可能なのではないかと悲観するようになった。
・大学生のころにBitcoin Protocolを知り、その自律分散的な設計に感銘を受けるともに、場所や時代を嘆かずに制度設計と向き合うべきだと強く勇気づけられた。
・大学院生のころに美術史を学び直し、制度設計への挑戦自体が現代美術になりうると自覚するようになった。具体的には、社会経済の停滞・膠着を打ち破ろうとあがく行為は、初期のコンセプチュアル・アートの現代日本における復興であり、また(自らの評価軸の形成を日本に促すという意味で)スーパーフラットを踏まえた次の芸術運動にもなりうるという考えに至った。

こうして自分の文脈に自分で納得できるようになった一方、現代日本を社会・経済学的に捉え、自律分散的な制度やインセンティブを設計し、かつそれを同時代的な芸術活動に位置づけるという試みは、複合的であるがゆえになかなか意図が伝わらず、理解者を得ることに苦労してきました。今回の出展希望は、美術と学術のどちらの側面ももつアートブックという形式・文脈であれば、この複合性をより素直に伝えられるのではないかという考えに基づいています。3点の出版物を通じて、近い志や問題意識をもつ人に新たに巡り会うことが大きな目的です。

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